2026年9月18日

こんにちは。みどりの丘歯科医院 の鹿山です。
前回の医療コラムでは、私が「なぜ歯周病専門医を目指したのか」についてお話ししました。
今回はその続きとして、
「そもそも歯周病専門医ってどんな資格なの?」
という疑問についてお話ししたいと思います。
患者様からも、
「普通の歯医者さんとは何が違うんですか?」
「歯周病専門医って、歯周病に詳しい先生ということですか?」
と聞かれることがあります。
名前だけを見ると少し分かりにくい「歯周病専門医」という資格について、できるだけ簡単にご説明します。
歯科医師なら誰でも「歯周病専門医」と名乗れるわけではありません
歯科医師の免許を取得すると、むし歯、歯周病、入れ歯、根管治療など、さまざまな歯科治療を行うことができます。
もちろん、一般の歯科医院でも歯周病治療は日常的に行われています。
一方、「歯周病専門医」は、歯科医師免許を持っているだけで取得できる資格ではありません。
日本歯周病学会の認定医を取得した後、さらに認定された研修施設で研修を積み、専門的な歯周治療についての知識と技術を身につけたうえで、症例審査やケースプレゼンテーション、筆記試験などの審査を受けます。
現在は、それらの審査を経て、日本歯周病学会の専門医審査に合格し、その後日本歯科専門医機構から「歯周病専門医」として認定される制度となっています。
つまり、
「歯周病に興味があります」
というだけで名乗れるものではなく、一定期間、歯周病について専門的な研修と臨床経験を積み、審査を受けて取得する資格です。
専門医になるまでには段階があります
日本歯周病学会には「認定医」と「歯周病専門医」という資格があります。
まず認定医として歯周病治療に必要な基本的な知識と技術を身につけ、その後さらに研修を重ねて専門医を目指します。
認定医は、認定された研修施設で3年以上研修し、歯周病治療に必要な基本的な知識と技術を身につけ、試験に合格した歯科医師です。
歯周病専門医は、そこからさらに研修を重ね、より専門的な歯周病治療の知識と技術について審査を受けた歯科医師です。
現在の制度では、認定医取得後も2年以上、歯周病専門医研修施設で研修を行うことが専門医申請までの過程に含まれています。
そして専門医試験では、知識だけでなく、自分が実際に治療した症例についても審査を受けます。
ちなみに認定医合格に必要な症例数は1症例ですが、専門医では10症例必要になります。
歯周病は、一つとしてまったく同じ症例はありません。
歯周ポケットの深さ、骨が失われている形、歯の動揺、噛み合わせ、全身状態、喫煙の有無、患者様ご自身の清掃状態など、さまざまな要素を考慮しながら治療計画を立てる必要があります。
そのため専門医には、教科書の知識だけではなく、実際の患者様を診断し、治療していく臨床能力も求められます。
資格を取ったら終わり、ではありません
私がこの資格で大切だと感じていることの一つが、
「取得した後も学び続けることが求められる」
という点です。
歯周病専門医の資格は永久資格ではなく、現在は5年ごとの更新が必要です。
更新のためには、学会や研修会への参加、業績発表などに加えて、現在は一定の臨床実績についても提出が求められています。
歯科医療は常に変化しています。
以前は難しかった治療が可能になることもあれば、以前は当たり前だと思われていた考え方が、新しい研究によって変わることもあります。
だからこそ、専門医である以上、資格を取得した時点で勉強が終わるのではなく、継続して新しい知識や治療について学び続けることが重要だと考えています。
歯周病専門医は何が違うの?
では、患者様にとって「専門医に診てもらう」ということには、どのような意味があるのでしょうか。
私は一番大きな違いは、
「歯周病を診断して、治療し、その後長く維持していくところまでを一連の治療として考えること」
だと思っています。
歯周病治療というと、
「歯石を取ってもらう治療」
というイメージを持たれている方も多いと思います。
もちろん、歯石や細菌を除去することは非常に重要です。
しかし、それだけではありません。
まず、
・歯周ポケットはどの程度深いのか
・出血している場所はどこなのか
・歯を支えている骨はどのくらい残っているのか
・歯は動いていないか
・なぜその部分だけ歯周病が進行したのか
などを詳しく調べます。
そのうえで歯周基本治療を行い、治療後にはもう一度検査をします。
そこで改善した部分と、まだ問題が残っている部分を確認します。
必要であれば、歯周外科治療や歯周組織再生療法など、さらに専門的な治療を検討することもあります。
そして治療が終了した後は、再発を防ぐためのSPT(歯周病安定期治療)やメインテナンスへ移行します。
つまり、
検査 → 診断 → 歯周基本治療 → 再評価 → 必要に応じた専門治療 → SPT・メインテナンス
までが歯周病治療です。
私は、この一連の流れをきちんと行うことがとても大切だと考えています。
「専門医なら、どんな歯でも残せる」の?
ここはとても大切なところです。
歯周病専門医だから、すべての歯を残せるわけではありません。
残念ながら、歯周病があまりにも進行してしまい、残すことが難しい歯もあります。
また、無理に一本の歯を残すことで、周囲の歯やその後の治療に悪影響を与えてしまうこともあります。
逆に、
「かなり骨が減っているから抜歯しかない」
と思われていた歯でも、詳しく診査すると治療を検討できる場合があります。
大切なのは、
「残すこと」そのものを目的にするのではなく、その歯を長期的に残せる可能性がどの程度あるのかをきちんと診断すること
だと思っています。
残せる歯は、できるだけ残す。
一方で、残すことが患者様にとって不利益になる歯については、その理由をきちんと説明する。
その判断も含めて、専門的な歯周病治療だと私は考えています。
どんなときに歯周病専門医へ相談したらいい?
すべての歯周病の患者様が、必ず専門医を受診しなければならないわけではありません。
ただし、例えば、
・歯ぐきからの出血や腫れがなかなか改善しない
・歯周ポケットが深いと言われた
・歯がグラグラする
・歯ぐきから膿が出る
・歯周病治療を続けているけれど改善しない
・歯を支えている骨がかなり減っていると言われた
・歯周病が原因で抜歯と言われた
・歯周外科治療や歯周組織再生療法について相談したい
・現在受けている治療について、もう一つの意見を聞いてみたい
といった場合には、一度専門的な診査を受けることも選択肢の一つです。
「この程度で専門医に相談していいのかな?」
と思う必要はありません。
まず現在のお口の状態を患者様自身がしっかりと知ることが、治療の第一歩です。
資格そのものよりも、その資格をどう診療に生かすか
ここまで「歯周病専門医」という資格についてお話ししてきました。
もちろん、専門医という資格は歯科医院を選ぶ際の一つの目安になると思います。
ただ、私自身は、
「専門医だから偉い」
とはまったく考えていません。
大切なのは、取得した知識や経験を、目の前の患者様の治療にどう生かすかだと思っています。
難しい専門用語をたくさん使うことよりも、
「今、お口の中で何が起きているのか」
「なぜこの治療が必要なのか」
「この歯を将来どうしていきたいのか」
を患者様と一緒に考えられること。
そして、治療した歯をできるだけ長く守っていくこと。
そのために、これまで学んできた専門的な知識や経験を役立てていきたいと考えています。
当院では患者様のお口の状態を様々な検査で診査、診断したのち必ずカウンセリングを行い、将来のゴール像を一緒に共有していきます。
この記事を書いた歯科医師について
私は大学院で歯周病について研究・臨床に携わり、歯学博士を取得しました。
その後も歯周病治療について研鑽を続け、日本歯周病学会の歯周病専門医として、現在はみどりの丘歯科医院でスタッフ一同一丸となって診療を行っています。
日々の診療では、軽度の歯周病から進行した歯周病、歯周外科治療、歯周組織再生療法、治療後のSPT・メインテナンスまで、「患者様ご自身の歯をできるだけ長く守る」ということを大切にしています。
この医療コラムでは、私がこれまで学んできたことや日々の臨床経験をもとに、歯周病や歯科治療についてできるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
今後は『小休憩』みたいな形で自分自身のことについて投稿しようと思ってます。
ぜひ楽しみにしてくださいね。
次回予告
次回は、
「そもそも歯周病ってどんな病気?」
についてお話しします。
歯周病は「歯ぐきの病気」と思われがちですが、実際には歯を支えている骨まで少しずつ失われていく病気です。
なぜ歯周病になるのか。
どのように進行していくのか。
そして、なぜ痛みがほとんどないまま進んでしまうことがあるのか。
次回は、歯周病の基本について、できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。